慢性腎臓病(CKD )のリハビリテーション
訪問リハで遭遇する機会が多いのが、慢性腎臓病((Chronic Kidney Disease; CKD))など腎機能障害ではないだろうか?慢性腎臓病は、無症状のうちに進行し、心筋梗塞などの心血管障害の合併の頻度が高く、廃用症候群やフレイルを来しやすい疾患である。一度失われると、回復する事が難しく、慢性腎不全まで進行、透析や腎移植を必要とする。腎臓リハビリテーションとは、早期に治療する事で腎機能低下を予防したり、遅らせる事で症状を調整し、生命予後や心理社会的ならびに職業的な状況を改善することであろう。
今回は、慢性腎臓病の病態やリハビリテーションを行ううえでのポイントをまとめてみたい。
腎臓リハで抑えておきたいポイント!!
1.心血管疾患になりやすい
2.サルコペリアやフレイルになりやすい
3.運動を行う事で透析移行を緩やかにできる
運動療法のCKD や透析患者に対しての効果
1)最大酸素摂取量の増加
2)左心室収 縮能の亢進(安静時・運動時),
3)心臓副交感神経系 の活性化,
4)心臓交感神経過緊張の改善,
5)低栄養・ 炎症複合症候群の改善
6)貧血の改善
7)睡眠の質 の改善
8)不安・うつ・QOL の改善
9)ADL の改善
10)前腕静脈サイズの増加(特に等張性運動による)
11)透析効率の改善
12)死亡率の低下などをもた らすことが明らかにされている.
引用:CKDにおける運動の効用
―これまでのエビデンスと可能性―
上月 正博:https://doi.org/10.4009/jsdt.45.988
また、最近の研究では保存期CKDに対して、運動療法を行うと、腎機能(糸球体濾過量:GFR)が改善するという報告が出ている。
CKD や透析患者に対してのリハの中核は、運動療法であろう。
腎機能について
腎臓はそら豆の様な形をした臓器で、老廃物や水分などを排泄し、をつくるためのであることはよく知られている。位置的に、腰のやや上に左右1個ずつあり、大きさはこぶし大で、重さは1個150グラムほどある。尿生成以外に、生命と健康を維持するために重要な働きをしている。
腎臓の主な働き
1. 血液の浄化/老廃物や毒素の排泄
全身をめぐる血液から
や毒素を取り除き、血液をきれいにする。 や毒素は尿中に排泄され、体の外へ送り出される。腎臓が一日にろ過する血液の量は150リットルといわれており、大型のドラム缶1本分に相当。この機能が低下すると、体中に や毒素がたまることになる。2. 体内の水分量や電解質の調整
体の水分やマグネシウムなど)は不可欠なものだが、多すぎても少なすぎても悪影響がでる。腎臓はそれらの量を調節することで、体内環境のバランスを保っている。
( 、 、 、 、3. ホルモンの分泌と調節
をつくる や を調節する 、 などの を分泌するほか、ビタミンDを活性化(体内で働くようにする)させて、骨を作る の吸収を助けている。
障害される事で、ミネラル代謝ネットワークが崩壊し、CaやPのバランスが崩れる。血清Ca/P濃度異常、続発性副甲状腺機能亢進症、線維性骨炎、骨軟化症、血管石灰化などCKD患者では見られる事がある。また、血液の浄化異常により、心血管系や全身性に状態異常を起こす。
腎臓病とは
腎臓の糸球体や尿細管が冒されることで、腎臓の働きが悪くなる病気をいい、何らかの腎障害が3ヶ月以上持続する場合と定義されている。
診断
症状が出現することはほとんどなく、蛋白尿や腎機能異常(eGFRの測定)により診断
引用:慢性腎臓病
腎機能低下に伴う症状はこちら
慢性腎臓病の心血管系発症リスク
引用:慢性腎臓病
CKD透析患者に対する運動療法の標準的メニュー
基本的には慢性心不全患者や高血圧患者の運動療法メニューに準じたものである。
基本としては、非透析日に週3~4回、1回あたり30~60分の歩行、エルゴメーターなど中強度(最大の60%未満)の有酸素運動が中心となる。それに、低強度の筋力増強訓練を加えるのが一般的であろう。
訪問リハで担当している透析の患者様に実際、提供している訪問リハメニュー
1.運動前後のストレッチ
2.関節可動域訓練
3.筋力増強訓練
4.歩行訓練
5.自主練習(メニューの確認)
最近の傾向として
透析最中に下肢エルゴメーターなどの運動療法を行う施設も多くなっている。透析中に運動を行う事で、たんぱく同化が促進され、リンなどの透析除去率が高まり、1回の透析時間を4時間から5時間にしたのと同等の効果があるとされる。透析中に運動を行う事で、他の時間を有意義に使用できる。透析の標準時間は4時間であり、退屈な場合が多いとされるため、透析中の運動は好評な場合が多い。
運動による心血管疾患やメタボリックシンドローム予防として、中度の強度で1日30分でも運動効果があるという報告がある。CKDガイドラインでは「運動疲労を起こさない程度の運動(5Mets前後)が安定したCKDを悪化させるという報告は無く、合併症などの身体状況が許す限り、定期的施行が推奨されるとされる。」とされている。
運動療法以外に
水分、塩分、タンパク質制限など食事療法、降圧剤など薬物療法、生活指導、精神ケアなど長期的、包括的な関わりが必要である。
運動療法を中心とした腎臓リハビリテーションの歴史は、まだまだ浅く、2011年1月「日本腎臓リハビリテーション学会」が設立、2019年3月「第1回腎臓リハビリテーション指導士認定試験」が実施されたばかりである。興味がある方は、学んでみるのもいいだろう。
参考文献
1)引用:CKDにおける運動の効用 ―これまでのエビデンスと可能性―上月 正博:https://doi.org/10.4009/jsdt.45.988
2)慢性腎臓病 http://www.twmu.ac.jp/NEP/mansei-jinzoubyou.html