時々刻々作業療法しましょう

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おむつのメリット デメリット(使用前に考えてほしい事)

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高齢者のリハビリでは、紙オムツを使用している方に関わる機会が多い。特に多いのが夜間だけオムツを履いている場合ではないだろうか。私見ではあるが、オムツを使用している利用者の多くは、オムツをパンツの代替え品と考えていないだろうか。

 

オムツを使用する理由は様々
  1. 失敗するのが心配で熟睡できないので履いている
  2. 何度か失敗した為、止む無くオムツを履く様にした
  3. 夜間転ぶのが心配なので動かない様にオムツにしている
  4. 病院で履いていたのでそのまま履くようにしている

 

様々な理由があるが、オムツは布パンツなど下着と違って様々な問題が起こり易い。

オムツの最低限の役割は、尿を漏れない様にする事である。布パンツなどと違い、吸水パットやギャザーなど工夫がされており、厚みがある。また、国土交通省が2018年に報告した紙オムツに関する基礎情報によると、オムツ使⽤前後の重量⽐は約4倍にまで増加する事が分かっている。(使用前1枚50gだとすると、使用後は200gまで増加する計算)市販されているオムツの多くは、表⾯材を通過した尿が、吸収紙、綿状パルプ、⾼分⼦吸⽔材で素早く吸収され、尿を逆戻りさせない構造をしている。その為想像以上に重くなってしまう。各種オムツメーカーにもよるが、1回量を約150mlと想定して作っている場合が多く、利用者が使用しているオムツによく観察してほしい。〇回量吸収など表示してある場合が多く、最大でどの程度重くなるかお分かりになるだろう。オムツを使用している利用者の身体機能にもよるが、一般的にオムツを使用してる利用者の多くは、介護度が重い場合が多い。オムツ使用する事で様々なメリットがある反面、デメリットもある事を訪問リハで関わるスタッフは抑えておくべきであろう。今回はオムツ使用によるメリットとデメリットに関してまとめてみた。

 

オムツ使用で得られるメリット

 

1.安心して生活できる

オムツ使用により一番感じられるメリットは、安心感ではないだろうか。尿が漏れてしまう事に不安を感じている場合、外に出る事機会が減ってしまったり、夜間安心して眠れないなど生活の質や身体機能低下を引き起こす引き金になる事が少なくない。高齢者の場合、この排泄の問題と口から食べる問題は、フレイル状態との関連性も高く、如何に安心して生活できる排泄条件を作れるかは、生活の質を担保する上でも重要な課題である。オムツ使用により気持ちや行動範囲が上向きになる場合、積極的な使用が望まれる。

 

2.介護者の負担が軽減できる

介護者にとって一番のメリットは負担軽減であろう。高齢者のオムツ交換は、慣れない介護者にとっては、心身的にストレスが多い介護問題のひとつである。また、オムツ交換は前かがみで行う為、腰痛などの問題を引き起こす要因となりやすい。オムツ交換のポイントはスムーズに、無理ない体勢で行う事である。オムツ使用により短時間での排泄処理が可能となる。介護者の負担が問題である場合、オムツ使用を検討する必要があろう。

 

オムツ使用によるデメリット

1.寝返りしにくい、歩きにくい

オムツを使用している場合、その厚みやパットのズレなどにより動きにくい事は容易に想像できる。特に股関節が外に開いてしまう事で、寝返りや歩行がしにくくなりやすい。座位姿勢なども吸水パットの影響で、オムツ内で滑りが発生しやすく、仙骨座りとなりやすい。オムツを使用している方の姿勢や、歩行など機能面を考えた場合、オムツの厚みや、枚数を検討する事は必要になる場合がある。

 

2.皮膚トラブルや褥瘡のリスクになる

オムツを使用している場合、尿や便の刺激や蒸れが原因になり、皮膚トラブルを引き起こす場合がある。オムツのしわによる圧迫やギャザーによる締め付けなど傷を作る原因になりやすく、オムツ内は湿気が溜まりやすい為、傷が褥瘡に進行してしまう事もある為、オムツ使用の関しては、サイズや皮膚トラブルの悪化を招かないものを選択する必要性がある事を留意したい。

 

3.絶対漏れないオムツはない

皮膚トラブルで述べた様に、オムツ使用により不快に感じる方が少なくない。オムツは日々進化しているが、オムツ使用に対して不快に感じる場合、パットをずらしてしまったり、脱いでしまうなど日中夜間を問わず尿失禁が起こる可能性は0には出来ない。特に認知面に問題がある場合、不快な使用感により、不穏になってしまったり、怒りっぽくなったりと様々な問題を引き起こす場合がある。オムツ使用する事でかえって介護負担が増加する場合がある事も抑えておこう。

 

4.自尊心が損なわれる

「オムツを使用する事に抵抗を示さない人はいない」事を踏まえておこう。高齢者が誰しもオムツを使用を二つ返事で歓迎していない。本人の自信を考える場合、オムツ使用はできるだけ避けるべきでもある。

他の方法が無い事やオムツを使用する事で本人が安心できる事など、オムツ使用の際は、自分の中でのルールを決め、評価をせず安易にオムツを選択しない事が重要である。

 

5.ごみや臭いの問題

最近はポータブルトイレなども進歩しており、1回事に袋に密閉できるトイレが介護保険で購入できる様になるなど、臭い問題に関しては対策がしやすくなって印象はあるが、アンモニア臭や便臭など時間が経つほど強くなる。介護力との兼ね合いもあるが、臭い問題は、同居する家族や近所の方にも悪い影響を及ぼしかねない。

また、最近使用済みオムツのごみ問題も話題になった事は記憶に新しい。介護をする家庭内から出るごみの6%ほどがこと使用済みオムツゴミであるとの報告がある。これから高齢者人口が増加する事を考えると無視できない問題であろう。繰り返しになるがオムツゴミは重い。家族が捨てる事を考えると、オムツゴミのゴミ出しの問題など、家族の介護力なども踏まえ考えるといいだろう。

 

まとめ

以上簡単ではあるがオムツのメリットとデメリットに関してまとめてみた。訪問リハスタッフは自宅で関わる為、ヘルパー同様にオムツ問題に直面する事が多い職種であろう。繰り返しになるが、オムツ使用にはデメリットもある。訪問リハスタッフは安易にオムツ使用を薦めるだけではいけない専門職である。オムツ使用はメリットにもなるが、自尊心を損なうリスクや転倒を起こすリスクも絡んでいる。利用者家族にとってベストな選択ができる様にオムツ使用に関しても抑えておこう。