時々刻々作業療法しましょう

時々刻々 作業療法しましょう

現場で使えるをもっとうに、作業療法士の引き出しを、時々書いています

片麻痺のスキー獲得・再開までポイント

作業療法士の仕事は多岐に渡る為、「自分が体験した事が無い課題」に対して、どの様にプログラムを立案すべきか悩む事が多い。

今回は、片麻痺を呈した方のスキー獲得まで、僕がどのように考え、関わったかをSPDCAサイクル形式(surveyーPlan-Do-Check-Action)で振り返りながらまとめてみた。

はじめにした事

S:Survey  調査

片麻痺のスキー獲得に関して下記文献、情報を調査

1)大学体育 スキー障害について 1999.25巻.3号

2)大阪大学医学系研究科・健康スポーツ科学講座  橋詰 謙 

   片麻痺がある方とのスキーツアー 

3)「選手の膝をケガから守る チームで取り組む障害予防トレーニング」 大見頼一

   ブックハウス

 

一番に考えた事はスキーで怪我をしない事「スキー障害の予防」

スキー障害の予防のポイント

〇統計的に

 スキーでの障害の75%は自分で転倒し発生しており、20%がスキーヤーとの衝突

〇スキーはスキー用具を用いて、自然の中で行われるスポーツであるため、スキー用具の点検自然環境の把握ビンディングが正しくセットされているかは極めて大切である事

〇特に、自力でビンディングが解放出来るか、セルフリリーフテストを実施する事

〇体調を整える事、必ず準備運動を行う事

〇認識の面では、自分の力量にあったコーススキー場の選択

〇保険として、万が一事故が発生した場合を考慮し、損害賠償保険への加入

P:Plan 計画

実行までに、最低限達成すべき目標を下記に設定し、計画を立てる

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1)転倒しない姿勢・スキーができる体力づくり

   (パワーポジション、サイドステップ練習など中腰で行う訓練を採用)

  • セルフメニュー作成 毎日 目標を30分➡60分へ段階的に 

   (10分で1000歩として、雨天時などできる様 歩数目標3000歩に設定)

2)スキー靴がスムーズに履ける

スキー靴の着用は、靴がハイカットになっており、足関節最大底屈位で、踵を踏み込む動作が必要になる為、麻痺が軽度でも時間を要した。そのため自助具作成を検討する

 

 詳しくはこちら

tokidokiot.hatenadiary.com

 

3)スキー用具の点検・メンテナンス

ご本人に確認しながら点検し、必要だと考えられる動作を1つづつ確認

  • ビンディングの点検・調整
  • ストックの高さ
  • スキーのワックスがけ・メンテナンス
  • ウエア―の着脱
  • 車への荷物積み込み方法

 

4)ビンディングが自力で外す(セルフリリーステスト)

スキー場を想定して、立位と座位でビンデングを外す時間を計測しながら実施する。

標準となる時間目標は決めず、前回よりスムーズにできる事を確認・振り返る

 

5)ゲレンデの選定・ゲレンデコンディションの把握

本人がいつも使用しているゲレンデを選定 ゲレンデコンディションの把握には、Web・ホームページのライブカメラを参照しながら確認する方法を確認

 

6)滑走前の準備体操の指導・周囲への指導

基本15分以上は準備運動を行う様に指導 はじめは友人・家族などと複数で行く想定し、同乗者にも同じ指導を行う 

 

7)1デイ保険やスキー保険に入って頂く

コンビニなどで入る事が出来る1デイ保険やスキー保険など必ず入る事を指導

 

D:Do 実行

計画を1)~7)まで達成したタイミングで実行に移す

実行の経過(概要)

  • 事前に簡単な打ち合わせ 同乗者に動画撮影の依頼
  • 〇月〇日 友人と家族送迎にてゲレンデに向かう 

   スキー靴は助手席足元で温めながら(これをする事で靴の着用が楽になる)

  • 準備運動を15分ほど行う
  • スキーを履いて歩く感覚をつかむ、なだらかな斜面で練習し、滑れる事を確認
  • リフト2回 

耐久性の事を考え、再開初日は1時間で終了となった。

C:Check 検証

同行できなかった事もあり、本人の感想を聞きながら、友人に撮影して頂いた動画を確認しながら不安な場所・動作・体力面など確認する

A:Action 改善

スキー後、麻痺している側の肩など重く凝っている感じるする様だったので、スキーは週1回程度までと修正した。

 

まとめ

簡単ではあるが、SPDSAサイクルを使用して、片麻痺の方のスキー獲得体験をまとめてみた。現在紹介した方は、この体験が自信につながり、以後一人でスキーを楽しむ事が出来る様になっている。実際は、明確な目標を提起できる方は稀で、訓練や体験、思い出話の中など関わりの中に、潜在的にしたいと思えるヒントが隠れている事が多い。作業療法士の関わりは、SPDCAサイクルもしくはSPDSAサイクル(C検証➡Study学習に変わったもので失敗・成功体験から学ぶ事)を通して双方に良い体験の機会をもたらすものでなくてはならない。私見ではあるが、特にSPの準備の段階で結果が大きく左右される。今後も準備を怠らず1事例ごと学んでいきたい。