在宅でみる 栄養状態の6つのポイント
在宅で担当している方の栄養状態を確認したい場合、食事たべれていますか?と聞いたところで大概は「食べれています」と言われるのが落ちである。
訪問リハビリでは、観察や情報収集から栄養状態を測る技が必要になる。
そこで今回は、在宅で栄養状態の把握するポイントをまとめてみた。
在宅で栄養状態を把握するポイント
1)血液データーを見る
手元に直近の血液データーがある場合は予め確認する必要があるだろう。
血液一般検査(末梢血検査)
血液生化学検査(肝機能、腎機能、代謝)
低栄養の基準
①血清アルブミン値:3.8g/dL以下
②コレステロール値:150mg/dL未満などが有名
しかし必ず血液データーが揃うとは限らないし、検査結果が出るまで時間を要する。よって在宅は見極めのポイントを抑えておく必要がある。
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2)体重で確認する方法
体重の時間経過で見る方法が、最も基本的なツールになる。
低栄養の基準
①体重が6カ月間に2~3kg減少した
②1~6カ月間の体重減少率が3%以上体重減少率の計算
(通常の体重-現在の体重)÷通常の体重×100
因みに、浮腫みによる体重増などは、心不全や腎疾患がある場合は悪いサインだと分かると判断しやすい。測定は、毎週、毎月、数カ月に1度など目的によって異なる。
3)身体計測で確認する方法
○腹囲
メタボリックシンドロームの判定に使用
男性:85cm以上 女性:90cm以上
○上腕周囲長
(arm circumference:AC)
※25cm以下サルコペニアの基準の1つ
○上腕三頭筋部皮下脂肪厚
(triceps skinfold thickness:TSF)
○ふくらはぎ周囲長
(calf circumference:CC)
※28cm以下がサルコペニアの判断の1つ
それぞれの測定値の時間的変化は栄養状態の確認をする際の指標となる。
3)比率でみる
○BMI(body mass index)
最も使われている比率指標の1つ
計算式
BMI= 体重kg ÷ (身長m)2
適正体重= (身長m)2 ×22標準は22
許容範囲 18.5~25未満 18.5以下やせ型
4)観察(皮膚、爪、毛髪)でみる方法
脱水症状の目安
○ツルゴール(皮膚緊張感):脱水の有無
引用:https://nurseful.jp/nursefulshikkanbetsu/pediatrics/section_8_00/
○舌のシワ:脱水
引用:https://nurseful.jp/nursefulshikkanbetsu/pediatrics/section_8_00/
○毛細血管再補充時間(capillary refilling time)
親指を蒼白になるまで強く押し、回復まで3秒以上かかる場合、脱水など疑われる。
○毛髪:色素脱失・脱毛(栄養不足や血行障害)
髪が作られる栄養素:タンパク質、ビタミン類、亜鉛などの不足や血行障害
○爪:白線有無
引用:https://minnakenko.jp/tsume-shiroi-sen-arawareru-naze-kesu-houhou/
○スプーン状爪:鉄欠乏性貧血を疑う
5)食歴を聞き取る
栄養状態を把握する為の基本の1つ
- 1日の食事回数
- 内容(主食・副食)
- 好き嫌い
- 食欲
など直接聞けない場合は、家族などに聞き取ると良い。高齢者などは、義歯の不具合で食べれていない場合があるため、日頃の聞き取りは重要である。
6)排泄物の聞き取り
大便の状態や頻度など聞き取りを行う
国際的にブリストル便形状スケールが有名
引用:http://www.carenavi.jp/jissen/ben_care/shouka/shouka_03.html
これらを使用する事で腸内の状態を確認する。
大便を形成する80%は水分である。残りが食物繊維や腸管繊維・腸内細胞と言われており、下痢などある場合は、更に水分が多くなる。
回数は1日1〜2回 少なくても2日に1回が通常と言われており、前日・前々日の食事が反映されやすい。
まとめ
以上、概要的ではあるが、在宅をイメージして栄養状態の観察のポイントをまとめてみた。在宅でこれら全てをはじめて担当した方に実施するのはなかなか難しい。これらポイントは、あくまでリスクを予測する材料として抑えておく必要性がある。
高齢者の場合、些細な事でも栄養状態が悪化しやすく、これらの状態がいつから起こったのか自分で伝えられない方も多い。訪問の際、「何かしら栄養障害がありそうだ」と予測できるだけで、観察の視点が広がり、事前にリスクを回避できる事もある。低栄養状態での過剰な運動は、糖新生の過程で筋肉内の脂肪や蛋白を分解し、返って筋肉量が減少する可能性もある。視覚的に確認できるサインも多いため、見逃さず効果的なリハビリに繋げていくためにも、是非抑えておこう。
参考文献
・地域リハビリテーションvol.8 No.8 2013.8月
・地域リハビリテーション 9(4):302-304.2014