時々刻々作業療法しましょう

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必見 訪問リハビリ 正しい血圧測定方法と解釈

在宅で測定する機会が多い血圧測定だが、正しい方法で測定しないと妥当性のある測定結果が得られない事も多く、条件によって数値の解釈が難しい場合がある。また、訪問リハビリで測定した結果と自宅で記録している結果との乖離など、訪問では良く観察されるため、どちらの数値を参考にしていいか疑問に感じる事もある。

そこで今回は、「日本高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)」と「高齢者高血圧ガイドライン2017(JGS-HT2017)」を基に、血圧測定の基本と血圧についての解釈をまとめてみた。

 

高齢者高血圧ガイドライン2017(JGS-HT2017)

によると

「高度に機能が障害されていない高齢者に対する降圧治療は、年齢に関わらず心血管病を抑制し、生命予後を改善するので行う(推奨グレードA)」

とあり、如何に血圧管理が重要かがわかる。

しかしながら、血圧は変動するため条件下で測定値が変わりやすい。

正しい血圧方法

1.カフの高さは心臓で

2.同じ時間で

3.楽な姿勢で

とあり、正しい方法での測定が望ましい。

高血圧の種類

1.本態性高血圧:原因がはっきりしないもの

  高血圧の90%がこのタイプ

体質、生活習慣など

 

2.二次性高血圧:原因が明確なもの

 残り10%がこのタイプ

  ホルモン異常、疾病由来、薬の副作用など

 

詳細は他に譲るとして、ここでは高血圧を、本態性高血圧として説明する。高血圧には測定する条件で様々な呼び名がある

タイプ別高血圧

仮面高血圧

診察室では血圧が正常だが、それ以外で高値を示す高血圧のタイプ。後述する白衣性高血圧とは逆のタイプ。家庭血圧で同定する事が必要。リスクは持続性高血圧同等か次いで高いため、降圧治療が必要になる。時間帯で呼び名が変わり、「早朝高血圧」、「夜間高血圧」、「昼間高血圧」となる。特に、早朝高血圧は、朝方に血圧が急激に上がるタイプの高血圧で、覚醒1時間以内は心大血管疾患のリスクが、最も高い時間帯とも言われている。高血圧の約半数が、このタイプに該当するとも言われている。

また、降圧剤なども夜飲んだ効果は、朝方には効き目が薄れてくるため起こる場合も多い。

白衣高血圧(診察室血圧)

診察室で血圧が高値だが、それ以外では正常値な高血圧で、診察室や訪問リハで専門家に測定してもらった場合など、精神的な緊張などに伴う高血圧。リスクは他高血圧に比べると比較的低い場合が多い。同定には、やはり家庭血圧の測定が必要である。

持続性高血圧

仮面高血圧と白衣高血圧の合わさったタイプ。早朝以外に夜間も血圧が下がらないものを言う。心大血管疾患との関連やエビデンスが確立しており、降圧治療が必要になる。血糖が高い方や腎臓障害がある方、大きないびきをかく方などに多い傾向がある。

 

高血圧の基準

一般的に135/85mmHgで、後期高齢者では145/85mmHg以上が高血圧と判断される。

また、以下に異なる測定下での高血圧基準の表を掲載した。

高血圧の基準

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ガイドラインでは、下記の様に家庭血圧を優先する事を推奨している。

「可能な限り家庭血圧あるいは、24時間自由行動下血圧を測定すること」とある。また、診察室血圧と家庭血圧に乖離がある場合は、診察や治療において家庭血圧を優先する

とあり、訪問リハビリでの測定結果と、家庭血圧と差がある場合は、家庭血圧を基準に血圧解釈をする必要がある

 

そもそも家庭血圧とは

日常生活で測定される血圧で、一般的に外来血圧より低く、高血圧判定基準は135/85mmHg以上

外来血圧より、心血管疾患との関連が強いと言われている。

家庭血圧測定方法

家庭血圧測定に規定があるわけでは無い。また家庭用血圧測定には、2種類のものがある。

コロトコフ法

f:id:ctorusholly:20190215223603p:image引用:https://port-medical.jp/media/images/243

カフを圧迫して、動脈を閉塞した後に、減圧する事で血液が流れ出す時の心拍と同期した音を聞き取り計測する方法である。熟練度によって差が出やすい。

オシロメトリック法

血管の振動で血圧を捉え、収縮期と拡張期の血圧を推測している。自動血圧計ではこのタイプが多い。上腕のものの方が正確な測定が可能で、手首用のものは精度面であまりオススメできない。

 

家庭血圧の測定のポイント

  1. 朝と夜に1日2回測定する
  2. 朝の測定は、起床1時間以内で排尿前で、朝食や服薬前に、座位1〜2分後に計測する。
  3. 夜は就寝前の座位1〜2分後に測定する。
  4. 自覚症状(頭痛、めまい)がある時測定する。
  5. 測定は、1機会に2〜3回測定の平均値でみる
  6. なるべく毎日測定が望ましい

 

測定の際、気をつけるポイント

1)起立性低血圧の有無

起立後2分での血圧が、収縮時血圧20mmHgまたは拡張期血圧10mmHg以上の低下があれば診断となる。

2)食後血圧低下

食後1〜2時間以内に血圧が低下する事が多く、この間での血圧測定は血圧を過小に評価する可能性がある。食後の影響がない時間帯での測定が望まれる。

 

3)排尿後の血圧低下

排尿中や排便中は血圧が上昇し、その後急激に低下する特徴がある。高齢者の場合、排尿・排便後の急激な血圧低下と立ち上がる動作も相まって失神してしまう方もいる。

 

4)運動による血圧上昇

先行研究によると最大血圧の上昇が著しい。運動をやめても一定時間は、酸素の供給が必要な事からすぐには低下しない。しかしながら、適度な運動は、血圧を改善する効果がある。

 

留意点

家庭血圧は、ご本人に行って頂く測定であり、記載する際、頻回に測定した中から最も低い数値を記載している可能性もある。また、家庭血圧の高血圧基準は135/85mmHg(65歳前期高齢者の場合は同様、後期高齢者75歳以上の場合は145/85mmHg)であり、診察室での血圧測定に比べて低いため、高血圧と診断されにくい。睡眠中や日中活動中の測定が困難な点は弱点である。

その他

24時間行動下血圧測定((Ambulatory Blood Pressure Monitoring:ABPM)

降圧薬が効いているか、あるいは逆に効きすぎていないか、夜間高血圧、早朝高血圧、ストレス下の高血圧、運動中の高血圧、仮面高血圧、白衣高血圧など診察室や家庭血圧でも知ることができない血圧の状態を知る為の測定方法。入院中や病院から機器を借りて外来でも行う事ができる。

 

以上簡単ではあるが、血圧測定やその解釈に関してまとめてみた。訪問リハビリでは、血圧測定の時間帯や条件で、療法士が測る測定結果と、実生活とは測定結果が違う場合がある。リハ対象者は比較的血圧もコントロールされた方が多いが、その場の数値だけを見て結論づけせず、生活全体として血圧を考えてみると、更に具体的な生活指導が可能になる。リスク管理にも繋がるため、抑えておくといいだろう。

参考文献

1)日本内科学会雑誌 第100巻 第2号 平成23年2月10日    診断Ⅰ 家庭血圧をどう扱うか  河野 雄平

2)日老医誌 2017:54:222-235

      高齢者の生活機能を考慮した血圧管理

    「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」の活用

       楽木 宏実     山本 浩一

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