時々刻々作業療法しましょう

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訪問リハビリテーション 前庭機能障害に対するリハビリテーション

今回は前庭機能障害のリハビリテーションに関してまとめてみた。平衡感覚は、主に内耳前庭系と言われる様に、内耳や前庭神経の働きが重要である。

前庭機能障害に対するリハビリテーション対象は、主に前庭神経炎、聴神経腫瘍摘出後、加齢変化に伴う前庭機能障害が適応だろう。

障害の主症状は、眩暈とふらつき感であり、リハビリテーションはその回復が課題である。

前庭機能障害のリハビリを行う際の3つの考え

適応(adaptation)

慣れ(habituation)

代償(substitution)

 

評価
  1. 身体機能面の評価(平衡感覚や身体機能)
  2. 症状が誘発される動作の評価
  3. ADL評価:日常生活がどの程度阻害されているか?

 ここから、具体的に前庭機能障害に対するリハビリテーションを見ていこう。

1.adaptation エクササイズ

頭部運動に対して、眼球が遅れる事でめまい感が誘発され、さらにそのめまい感から姿勢不安定が引き起こされる。

とあり、この治療の目的は、頭部運動に対する眼球の動きを改善させる事である。

文字などを書いたカードを使用し、じっと見続ける事(固視)と追視や頭部運動を組み合わせる運動で治療を行う。

 

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エクササイズ

ステップ1

固視 + 眼球運動(左右)

 

ステップ2

固視 + 追視(左右)

 

ステップ3

固視 + 頭部回転

 

ステップ4

固視 + 頭部回転 + 追視

 

上下方向へのエクササイズの場合も、運動方向は、上下と変るだけで、ステップ1~4の図を参照に実施するといいだろう。これら指導と、自主練習の提供を行う事で頭部の動きに対する眼球の動きの改善を目指す。

 

運動目安

運動時間:1~2分/回ほど

セット数:1日 5回ほど

訓練期間:1~3ヵ月程度

難易度設定

     姿勢:座位 ➡ 立位 ➡ 柔らかいパット上

     スピード:遅い ➡ 早い

恐らく、前庭機能障害のリハビリテーションの基本は、このadaptationエクササイズであろう。バランス訓練と併行しながらadaptationエクササイズの定着を図る。

 

2.habituation エクササイズ

めまいを起こす動作の反復で、めまいが軽減する事は良く知られている。めまいが起き易い動作を、繰り返す事で軽減を図る。

ここで1つ注意点がある。めまいが起こる動作とは、不快な動作でもある。ご利用者は、めまいに対してやや恐怖心を抱いている場合も少なくない。誘発動作に関しては、はじめから勢いをつけて行わず、ゆっくり行いながら早い動きへと段階づけを行うなど、配慮は欠かす事は出来ない。

 

3.substitution エクササイズ

前庭機能以外の機能を、代償的に使用して補う事を目的とする。頸椎の固有感覚は、前庭と共同して働いていると言われており、頸部の固有感覚や視覚的な代償を使用しながら協調性を高めていく。これら訓練は、平衡感覚を鍛える訓練としてadaptationエクササイズと併用して行う。

いくつか例を挙げると、視覚的にフィードバックを図りながら行う訓練としては、鏡を使用して行う訓練などが思いつく。鏡の前で、左右差や頸部の位置など確認して頂き、傾きなどあればご自身で修正を行う。また、軟らかいマットを使用したり、バランスボールなど支持基底面に変化を与える訓練なども段階的に取り入れると効果的である。頸部の固有感覚と姿勢の協調的な訓練として、頭部にレーザーポインターを固定し、頭の動きでポインターをコントロールする訓練など様々な方法が報告されている。めまいの改善に時間を要する方では、先に日常生活でめまいが誘発されにくい動作指導を行う。自主訓練指導としては、トレッドミルやエアロバイク使用中に、頸部の回旋を行う運動を組み込んで指導するなど様々な方法が考えられる。

まとめ

以上簡単ではあるが、前庭機能障害のリハビリテーションに関してまとめてみた。前庭機能障害に関しては、積極的に取り組んだ経験が無く、僕も勉強不足な分野ではある。基本的な考え方としては、「眼球の運動と頭部の運動との協調性」「固有感覚と頸部の位置関係」が問題の場合が多く、正しい指導で十分改善できる可能性がある。

同じめまいでも、高齢者の場合は、内耳から起こるめまいが多く、広い意味で平衡障害やめまい症と捉え、病態的な特徴から前庭か内耳なのか推測しながら関わる事が必要になる。より良い生活支援の為にも、引き出しのひとつとして抑えておこう。

参考文献

・地域リハ8(4):302-304、2013

・専門医講習会テキストシリーズ リハビリテーションによる機能回復 めまい

2015年118巻3号p263-266

・愛知県理学療法士学会誌 23巻2号 前庭のリハビリテーション *浅井友詞1) 森本浩之2)

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tokidokiot.hatenadiary.com

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