時々刻々作業療法しましょう

時々刻々 作業療法しましょう

現場で使えるをもっとうに、作業療法士の引き出しを、時々書いています

リハビリ専門家の呼び方 正解は先生?それともさん?

一般的に先生と言ったら、医師か学校教諭を指す事が多い。医療業界では医師以外先生と言う表現は適切では無いと思うが、我々リハビリ専門職は、その特性上、先生と言われる事が多い。今回の記事は、リハビリ専門職の先生という立場に関する話。

リハビリ専門職は、一般的に運動を提供する事が多い専門職である。また、医療や介護現場では個別で関わる事が多く、指導をする立場でもある。

この特性上、「リハビリの先生」や「運動の先生」など様々な呼び名で呼ばれる事がある。

ある看護師が患者に「お医者さんでは無いので先生って呼ばなくていいんだよ」と言った場面に遭遇した事がある。僕もその意見には、賛成だ。むしろ違和感もある。

しかし、敢えて患者さんに修正はしない。

医療は今や他職種のチームで行う事が多い。病状の事は医師や看護師が担当する。栄養は、栄養士、リハビリの事は理学療法士作業療法士、飲み込みは言語聴覚士などそれぞれが違った専門性を持った先生と言えよう。

先生と言われる立場には、それ相応の責任が伴う事を意味する。理学療法士は運動を定着させ、健康的に生活できる様導く責任がある。

言語聴覚士は、楽しく食事できる口腔機能や話を楽しめる様、口の言語を守る責任がある。では、作業療法士の責任とは❓

作業療法士の定義が2018年5月に改定した事は記憶に新しい。

作業療法は,人々の健康と幸福を促進するために,医療,保健,福祉,教育,職業などの領域で行われる,作業に焦点を当てた治療,指導,援助である.作業とは,対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す.

テーマはその人々にとっての健康と幸福であろう。

チーム医療共通のテーマが健康だとすると、作業療法士は「個人にとって価値ある作業を通しての健康と幸福を促進する専門家」としての責任があろう。

話を戻すと、「リハビリの先生」と呼ばれる作業療法に違和感を覚えるのは、「個人にとって価値のある作業」これは個別性が高いため、個人の価値については、対象者自身の方が先生となり得る。作業療法士は、対象者の意欲を引き出すため、敢えて教わる側になる事も多い。高齢者などでは特にその傾向が強く、教える事で活き活きとする方も少なくない。リハビリのスタッフを先生と呼ぶ事に関して、僕自身はどちらでもいいというのが答えではある。ただ作業療法の立場からいえば、個人の価値観を尊重した上で敢えて修正すべきではないと考える。

私見ではあるが、リハビリ専門家たるもの意欲を引き出す事が最低限の務めであると考えている。もちろん、時事刻々と変わる制度や技術、知見を学ぶ事は、専門家のあるべき姿勢であろう。しかし、いくら効果的な治療を実践できる技があっても、リハビリをする主体はご本人である以上、本人主体であるべきである。

先生と呼ぶ呼ばないと言う問題は横に置くとして、

「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という有名な言葉がある。稲の穂は実るほどに穂先が低く下がるもの。 どんな職種にせよ先生と呼ばれる立場のものほど謙虚な姿勢で人と接することが大切であろう。