高齢者のめまい(治療編)
前回の記事では、眩暈の原因にfocusをあて、危険な眩暈との違いや、眩暈の症状など述べた。今回は、眩暈の治療編として、回転性眩暈に代表される「良性頭位発作性眩暈症(BPPV)」の評価や治療に関してまとめてみた。
良性頭位発作性眩暈症
特定の頭位をとる事によって、眩暈が誘発される病気。眼振を伴う、回転性の眩暈が特徴である。難聴や耳鳴りなど聴覚障害は伴わない事が、メニエール病との違い。
内耳の構造と位置関係
三半規管の構造
引用した図で注目してほしいのが、三半規管では、後半規管が一番下に位置している点と後半規管は、正面から見ると45°ほど外側に開いた形で付着している点である。
良性頭位発作性眩暈症の病態
1.半規管結石症
耳石が半規管内を自由に浮遊している状態
2.クプラ結石症
耳石器から耳石の一部がはがれ、半規管膨大部にあるクプラに付着する
発生機序としては、卵形嚢や球形嚢にある耳石の一部が剥がれ落ちる事で、内耳を満たしているリンパ液の中を耳石のかけらが漂う。液体の中を物質が漂う事で、リンパの流れに乱れが起きたり、リンパの流れが阻害される。感覚毛(クプラ)は三半規管の中でリンパの動きを敏感に感知して、前庭神経から脳に情報を送る器官である。後半規管は一番下に位置している為、重い耳石のかけらは溜まりやすい。
頭部の位置を変える事で、溜まっていた耳石のかけらが再び浮遊する。浮遊による流れの変化で、感覚毛(クプラ)が誤反応するといったイメージでいいだろう。
感覚毛(クプラ)※図は左側の内耳
適切な診断には、耳鼻科など受診が必要である。
訪問リハの評価としては、眩暈が生活にどの程度影響しているか?その眩暈は内耳の後半規管から起こる眩暈か判断するという意味で、以下に評価を述べる
良性頭位発作性眩暈症の評価
特徴から判断する
1.頭位の変化での眩暈
頭の位置で眩暈が発生する
2.めまいの遅延
- 半規管結石症
液体(リンパ液)と物体(耳石のかけら)は、同じ方向に振った場合、液体に比べて物体の方が遅れて動く。そのため、眩暈は起き上がり直後より数秒遅れて起こる事が多い。
- クプラ結石症
クプラに耳石のかけらが直接付着している為、眩暈が遅延する事は少ないと言われている。
3.めまいの疲労
めまいが起こる動作を繰り返す事で、眩暈症状が軽減・消失する特徴がある
4.聴覚症状を伴わない
眩暈以外の聴覚症状が起こらない特徴がある
頭部の位置を動かす
頭部の位置から三半規管のタイプを分類する。良性頭位発作性眩暈症の治療としては、①眩暈の疲労を活かす事や②三半規管の中の耳石のかけらを外に出す事が挙げられる。耳石の位置を確認する評価が、そのまま治療につながる事になる。
引用・参考:聖路加国際病院 救命救急センター
救急ジェネラルカンファレンスを参考にした
治療(リハビリテーション)
良性発作性頭位めまい症(BPPV)ではEpley法が一般的に推奨される。
抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン[アタラックスP]、ジメンヒドリナート[ドラマミン])
ベンゾジアゼピン系薬(ロラゼパム[ワイパックスなど])の使用が推奨される。
炭酸水素ナトリウム(メイロン)ベタヒスチンメシル酸塩(メリスロンなど)はよく使用されているが、その効果を支持する根拠は乏しい。
吐き気が改善しない場合は制吐薬(メトクロプラミド[プリンペランなど])の使用を考慮する
まとめ
良性頭位発作性眩暈症は、高齢者での眩暈では約3~4割を占める眩暈であり、遭遇する機会が多い眩暈である。高齢者の場合、眩暈すると収まるまで横になって過ごす事が多い。中年期の不定愁訴と主観的健康感に関する研究でも、「頭痛や眩暈」は男女共、主観的健康感低迷と関連が指摘されている。眩暈の多くは、数分程度で収まる事が多いが、起き上がる事に不安を感じる高齢者も少なくない。訪問リハの機会に適切な指導が行える事で、日常生活がより快適なものに繋がる場合もある為、是非引き出しの一つとして覚えておこう。
参考文献
地域リハ8(3):214-217、2013
1993年1993巻supplement62号p.100-104
2018.6.23-6.24 第31回 日本健康心理学 記念大会発表論文集





