第1回 正常な排尿動作 正常な尿意をどうとらえるか?
「最近尿が近い」
「尿漏れをする様になった」
高齢になれば、これら症状は「誰でも起こるものだからしょうがない」と考える高齢者は少ない。事実、個人差はあるものの加齢に伴って、膀胱が過敏になる、尿道を絞める括約筋や骨盤底筋群が緩む、前立腺が肥大して尿が出にくくなる事は多くなる。在宅では、排泄ケアの問題は、生活の質にも直結する問題であり、積極的な改善が求められる。排泄の問題を考える際、一番に内服薬を考えてしまう方は少なくない。しかしながら、排泄過程はいくつかの段階によって成り立っており、どの段階での問題か見極める必要性がある。その際のポイントは、「正常な排尿」という物差しであろう。
正常な排尿動作の9つの段階
1)適切な尿意
2)トイレ・便器の認識
3)移動
4)脱衣
5)便座への乗り移り
6)排泄
7)後始末
8)着衣
9)移動
そこで第1回目の今回は、1)適切な尿意についてfocusをあてて高齢者の尿意をまとめてみよう。
尿意とは
尿がしたいという感覚をいう。尿が溜まる事により、膀胱内圧が上昇、神経を刺激する事で、尿意として感じる事が出来る。
一般的に尿意は、膀胱内に200~300mlほど尿量が溜まる事で感じると言われており、はじめに感じた軽い尿意を「初発尿意」といい、一般的に初発尿意を感じてから30~60分程度は我慢できる猶予がある。また、尿意の進行は、強弱を繰り返しながら強くなる経過を辿り、膀胱最大容量で感じる尿意を「最大尿意」という。
高齢女性群と若年女性群で初発尿意と最大尿意時の膀胱容量に関する先行研究では、両群で膀胱容量に優位差は無く、両群とも初発尿意を感じる膀胱容量は320±120mlほどで、最大尿意では500±100mlであった。傾向として、高齢女性群では初発尿意の遅延や残尿の増大を伴うとの報告はあるが、平均尿流量*1に関する同研究では、初発尿意では加齢により平均尿流量の低下は認めるものの、最大尿意時の平均尿流量が年齢によって差が無い事から、最大尿意時の平均尿流量を測る事で、膀胱収縮力の目安になる事が示唆されている。
これは、尿意を我慢できる所まで我慢した際の排尿の勢いや、排尿に要する時間で膀胱の収縮力を確認できるというもの。
尿流量の正常値
150ml以上の尿量 15ml/sec以上
自宅で平均尿流量を計測する場合、最大尿意時に尿量を計量できる器と掛かった時間を計測する事で、大まかな尿流量を知る事が出来る。
次に排尿時間は、一般的に、30秒程度までは、正常範囲としており、60秒以上かかる場合、膀胱収縮力や尿道に何かしら障害があるの可能性があると言われている。また、 正常な尿意の場合、睡眠中に尿意を感じたとしても、覚醒できるとしている。
健常者と高齢者排尿の比較
尿意の異常時に考えられる原因
泌尿器機能低下、判断力の低下、運動機能の低下に分けて考えると判り易い。
泌尿器機能低下
〇膀胱から脊髄神経を介して大脳に伝わる神経伝達が損傷し、尿意を感じない
〇何らかの原因により膀胱・尿道の弛緩が起こり、尿意を感じにくくなっている
〇膀胱が過活動になっており、過剰に尿意を感じている
〇排尿困難があり、尿意を感じても出せない状態になっている
判断力の低下
〇尿意・便意を感じていたとしても、理解できない
※認知症の場合、尿便意を不安や心配など行動で示す場合が少なくない。
運動機能の低下
〇脳の障害や言語面での障害があり、尿意を適切に訴えられない
まとめ
適切な尿意に関して、簡単ではあるがまとめてみた。尿意の有無は、リハ場面で聞き取る事が多い項目だろう。尿意の確認の際には、尿意を感じてから排尿までの時間やどの程度排尿に時間を要するか、尿が出る勢いなど細部を聞き取る事が重要である。その上で尿意障害に潜む原因を理解しやすくなる。リハ専門職の中には、尿意が無い=自立できないと、不可逆的にとらえているスタッフも多い印象を受ける。しかしながら、尿意は排泄動作の1つの段階に過ぎず、原因によっては回復の可能性もある。また、時間的な管理や代替えの方法も検討できる。高齢者の尿意の場合、訴えが無い事が尿意が無い事にはならない場合がある。認知機能や行動面から尿意のサインを見逃さない事もここで強調しておこう。
参考文献
日本老年医学会 2012年49巻6号p767-774
尿排泄機能に及ぼす加齢の影響:高齢者女性と若年女性の比較
地域リハ vol.8 No.11 2013年11月 高齢者の排尿障害へのケア
併せて読みたい
*1:平均尿流量とは、単位時間当たりの平均尿排出量を指す
