時々刻々作業療法しましょう

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訪問リハビリテーション リスク管理 糖尿病編

訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)では、訪問看護ステーションでの訪問リハと違い、看護師が配置されていないため、特に注意したいのがリスク管理だと思う。僕の場合、高齢者と関わる機会が多いため、以下の点を注意しながら関わっている。

①高齢者特有のリスク

➁疾患・障害からのリスク

③個人・環境的なリスク

在宅訪問中のリスクと言うと、事故や急変など遭遇する可能性を考えてしまいがちだが、一番のポイントは、リスクを見越してできる限り、予防する事に他ならない。

そこで今回は、訪問リハで押さえておきたいリスク管理と題し、数回に分けて訪問リハで特に遭遇する機会が多い疾患や最低限必要と思われるリスク管理について述べていきたい。

 

第1回目 

訪問リハビリテーション

糖尿病高齢者のリスク管理

 

はじめに

糖尿病高齢者のリスク管理のチェックポイント

 血糖高ントロールが不良か良好かの判断は?

 

2016年「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」より抜粋

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一番気になるのが、血糖コントロール良好か不良だと思う。高齢者の場合、カテゴリー分類を目安にする方法がある。

(1)カテゴリー分類で判断する方法

 

カテゴリーⅠ 

①認知機能が正常 かつ ➁ADL自立

インスリンなし HbA1c7.0%

インスリンあり HbA1c7.5%(下限6.5%)

カテゴリーⅡ 

①軽度認知障害~軽度認知症 または、②手段的ADL低下 基本ADL自立

インスリンなし HbA1c7.0%

インスリンあり HbA1c8.0%(下限7.0%)

カテゴリーⅢ 

①中等度以上の認知症 または ②基本的ADL低下 または 多くの併存疾患や機能障害

インスリンなし HbA1c8.0%

インスリンあり HbA1c8.5%(下限7.5%)

高齢者の場合、やや若年者に比べ血糖値が上昇しやすい特徴がある。そのためHbA1cは高めに設定されている事が分かる。

担当の利用者が、現在どのカテゴリーに分類されるかで判断する事で、大まかな血糖コントロール目安がつきやすい

バイタルサインや体調面の確認は?

下記4点の確認を行う事が重要である

  1. バイタル状況の確認(熱、血圧、脈など)
  2. 食べれているかの確認(シックデイ対策)
  3. 低血糖症状の有無
  4. 症状への対応

   

1.バイタル状態の確認

特に注意したい事は、高齢者の場合、自覚症状が乏しい事

聞き取りをしながら、症状の変化を見逃さない事が重要である。

また、必ず体重を確認する。BMIや体重コントロールが一番馴染みのある共通数値目標となる。また、予防の観点から高血圧コントロールも重要である。

糖尿病高齢者の血圧目標値  130/80mmHg前後とされている

 心大血管の予防の観点から一般的な高齢者の血圧コントロール目標よりも厳しい事を理解しているといい

高血圧に関して詳しくはこちら 

tokidokiot.hatenadiary.com

 

2.食べれない際の対応(シックデイ対策)

 インシュリンを使用している方が、体調不良などで食事が食べれない状態をシックデイと言う。その際は、食事量に応じて、インシュリンの単位を減らすなどシックデイ時の指導を受けている場合がある。

「ごはんが食べれない場合の指導など何かありましたか?」

「シックデイ対策などあれば教えてください」

 と確認する事をお勧めする。

また、食事が摂れていても栄養状態が不良な場合も考えられる。食事を食べていますか?と確認しても大抵の場合は、主観的な返答になってしまう。1日何食、何時に 主食・副食の量など具体的に確認する事が必要である。

 

在宅での栄養状態の観察方法はこちらから

3.低血糖症状の有無を確認する

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低血糖症状を認識できる場合は、早急に対応が可能であるが、高齢者の場合、自覚症状が乏しい。既往が長い方の場合、特にその傾向が高いため注意が必要である。

 

4.低血糖症状出現時の対応

〇飴や角砂糖、糖分の入った飲料水などあればそれで代用

〇糖分摂取後15分で症状が改善しない場合は、もう一度摂取し様子をみる

〇意識低下がある場合は、回復したとしても、医療機関の受診をする。

 

繰り返しになるが、高齢者の糖尿病は自覚症状が乏しい。そのため少ないサインから症状がないか観察が、大切になる。日頃の状態など事前に確認する事を忘れてはならない。

糖尿病の合併症に関しては?

糖尿病発症は多くの合併症を招く疾患である。特に、5年以上経過している例では合併症のリスクが高い言える。

 

 

三大合併症

1)神経障害:一番多く見られる!!  

2)網膜症 

3)腎障害

 

この中で神経障害で最も多く、広汎性左右対称性神経障害(多発神経障害)と単神経障害に大別される。

広汎性神経障害では、

遠位対称型ポリニューロパチー(distal symmetric polyneuropathy)グローブ&ストッキング型感覚障害などが有名

https://nurseful.jp/career/sp/img/nursefulshikkanbetsu/cranialnerve/figures/3_4_3_fig1.png

https://nurseful.jp/nursefulshikkanbetsu/cranialnerve/section_3_04_01/

 

単神経障害では、

巣型単ニューロパチー(Focal mononeuropathy)片方の眼瞼下垂や複視

http://www.matsumoto-ganka.jp/img/material/15_img_01.jpg

 

http://www.matsumoto-ganka.jp/original15.html

腓骨神経麻痺:正中神経麻痺や下垂足など見られる。

 

https://good-health.jp/wp-content/uploads/2017/02/de8c2f5beae810184f986399f03239ba_s-427x350.jpg

 糖尿病の運動療法のポイントは?

運動療法の目安として

有酸素運動:安静時0とした場合、40〜60%

運動強度:3METs 程度(散歩程度)から開始

心拍数は酸素摂取量とほぼ比例して直線的に増加する事、最大心拍数は年齢によって異なる事から(220−年齢)でおおよその目安になる(Karvonen法)※β遮断薬使用者や自律神経障害を有する方はこの限りではないので、注意

Borgの自覚的運動強度スケールでは11〜13(楽である〜ややきつい)程度が適当である。

糖尿病の運動頻度としては、10〜60分 週3回以上が推奨されており、目安として週150分ほどが血糖コントロールにはいいだろう。

30分のウォーキングで約100kcal程である点を踏まえると食事療法が重要である事は忘れてはならない。

以上簡単ではあるが糖尿病のリスク管理に関してまとめてみた。先行研究では、長期運動を継続している方が、高強度の運動でも突然死や心停止などリスクが小さくなる結果もあり、自覚症状が少ない糖尿病の方が、継続して食事療法や運動を続けられる環境作りが最大のポイントになると思われる。

担当している方が糖尿病を合併している場合、基礎的な部分なので踏まえるといいだろう。

参考文献

地域リハビリテーション13(4):281-284.2018

糖尿病性神経障害の病態と治療 中村二郎 2015年106巻suppl号p133c~134a

高齢者糖尿病 第41回日本老年医学会学術集会録

患者さんのための糖尿病ガイドhttp://www.dminfo.jp/pc/taisaku/teikettou.xhtml

南山堂 心疾患リスクを防ぐ!テーラーメイド 糖尿病診断ガイド 2011.2.1 1版